魅力的な人

バリアフリー観察記2002年

魅力的な人

 長野オリンピックが終わって引退したノルディックスキー複合の荻原次晴さんが、講演会で初めての海外遠征のエピソードを披露していた。
 試合には出場したもののまったく歯が立たず、外国の強い選手と話をしたくても英語を話せず、目を合わせることすらできなかったという。でもその後、様子が一変した。日本がワールドカップやオリンピックといった大舞台でたくさんのメダルを取るようになると、外国の選手たちが「トレーニング方法を教えてほしい」と話しかけてくるようになった。それにつれて英語も苦にならなくなり、友だちも、どんどん世界中に増えていったという。

 できないことについてあれこれと思い悩んでばかりいるよりも、できることに磨きをかけている人のほうがずっと魅力的だ。外国の選手たちは荻原さんの魅力に魅かれて話しかけてきた。英会話ができない荻原さんから、身振り手振りを交えて何とか強さの秘訣を聞き出そうとしている外国選手の姿を想像すると、思わず笑いが込み上げてくる。

 得意、不得意はだれにだってあるけれど、不得意だからといってその人の存在価値がないわけではない。パソコンを上手に使える、英語がペラペラ、話題が豊富……。「他人の力を借りなければできない」なんて考えずに「力を借りればできる」と考えて、何か一つ、人より得意なものを伸ばせばいい。そんな風に考えられるポジティブさが、魅力になったりもする。

 ある座談会の席で、車いすを使っている男性が話した言葉を今でもよく覚えている。
「介助される障害者が人気のある障害者になればいいわけですよ。テレビを見る時間はいっぱいあるんだから、うんとテレビを見たり本を読んだりして介助者に面白い話をしてあげるとかして、こいつは面白い奴だと思わせる努力を、介助を受ける側もする必要がある」
 ヘルパーさんやボランティアといった、いわば他人の介助者とどううまくやっていくかがテーマだった。
 自分と同じ立場の人についてこんな考えを持っている人もいるのだということに驚かされながら、とても新鮮な感じがした。

「こいつは面白い奴だと思わせる努力を、介助を受ける側もする必要がある」という指摘には、とても重要なメッセージが含まれている。介助を利用する人も提供する人も、お互いに対等だということ。さらに言えば、単に介助者と障害者という関係だけではなく、その間に、魅力的な人という人間的なつながりがほしいわけだ。
 何かにつけて人をうらやましく思うことはあるけれど、どんな立場の人でもそれぞれに何かを克服している。ただ、それに立ち向かう気持ちには大きな違いがある。

トップへLink

Last Update : 2003/02/24