技術の進歩と個性の時代

バリアフリー観察記2002年

技術の進歩と個性の時代

 

 地球上のだれとでも自由に会話ができる「自動翻訳機」は、実用化を特に心待ちにしているものの一つだ。英語でもフランス語でもスペイン語でもドイツ語でもロシア語でも、言葉の違いを一切気にすることなく通訳なしに外国人と直接話すことができる。
 テレビ番組で、インタビューに答えたおばあさんの津軽弁に字幕が付けられているのを見て笑ってしまったけれど、言葉の違いって、結構大きなバリアだと思う。もちろん形はないけれど。

 ホームページのように文字で表現されているものはすでに自動翻訳が実現していて、英語から日本語に翻訳するサービスが無料で提供されていたりする。それだけに、次なるステップである音声の自動翻訳も、決して遠い将来のことではないと期待が膨らんでいる。

 技術が進歩することで、コンピューターやロボットにできることが増えてきた。たくさんのことを記憶させ、その中から必要なものを見付け出す能力は人間をはるかに上まわる。国語、和英、英和といった辞書が手のひらサイズの機械に詰め込まれ、安売り店やスーパーのレジの横にさえ並んでいる。薔薇(バラ)と漢字で書けなくても、曖昧模糊(あいまいもこ)といった熟語の表記が分からなくても、ワープロを使えばだれでもその字を打つことができるようになった。自動翻訳機も、そういったことの延長線上にあるわけだ。
 こうなると、漢字をたくさん知っているとか外国語を話せるといったことが持つ意味はどんどん薄れていき、英語を話せないというコンプレックスも、それに連れて消えていきそうだ。

 そういう時代に必要になるのは、何語を使うにしても、魅力的な個性だろう。あらゆることが機械化された世の中では、個人の感性やセンス、経験といったオリジナリティこそがその人の価値を決めるようになる。ただ英語を流暢に話せるだけの人よりも、自動翻訳機を使っていても面白い話題を提供し、個性的な話ができ、新しいことを提案できる人のほうが魅力的に違いない。

 こうして言葉の問題が解消されれば、英会話を苦にしない息子たちの世代の人たちとも、シビアなビジネスの世界で対等にやっていけそうな気持ちがしてくる。いやいや、人生経験が豊富な分、自分の方がむしろ力を発揮できるはずだと思えて、自信さえわいてくる。

 ペット型ロボットは、相手の対応によって反応に変化を付けることで爆発的に売り上げを伸ばし、家庭で可愛がられるようになった。ロボットは画一化されたことを正確にこなしていくものというイメージがあったけれど、今では表情を付けたり自分の気持ちを動きで表現したりと、どうやって違いを作り出すか、個性を搭載するかがテーマになっているという。
 個性の時代は、人より先に機械やロボットの世界に訪れている。それは、近い将来の自分の立場を暗示しているようで、とても興味を引かれる。

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Last Update : 2003/02/24