万国共通のルール

バリアフリー観察記2002年

万国共通のルール

「スポーツは世界共通の言語だ」なんて言われたりする。言葉や宗教、国が違う初対面の相手とでもすぐに試合ができるのは「ルールが統一されているから」ということに尽きる。サッカーでは「手を使ってはいけない」ということに始まり、1チームの選手数もボールのサイズも1試合の時間も万国共通。だからこそ、ワールドカップという地球規模の大会が行えたりする。

 国によってコンセントの電圧が違ったり、車の走行車線が左だったり右だったり、チップを渡す習慣があったりなかったり……。世界的にルールが統一されていないために感じる不便さは少なくない。
 例えば単位。
 海外でお土産を買うとき、値段を一度「円」に換算しないと高いのか安いのかがよく分からない。温度の単位には摂氏と華氏があって、華氏を使っているアメリカやイギリスで「熱が40度もあるので今日は学校を休みます」なんて言っても理解してもらえない。摂氏40度は、華氏で言えば104度。「華氏温度=1・8×摂氏温度+32」なんて公式があるけれど、もうろうとしながら電卓を叩かなくてはならない。

 似たような不便さは、国内にいても感じることがある。知人の部屋探しを手伝いながら「6帖×2、ダイニングキッチン6帖」という広さの割に格安な物件を見付けたときのこと。実際に部屋をのぞいてみると、どうにも狭い。実は、関東の江戸間と関西の京間では畳の大きさが異なるようで、同じ1帖でも京間のほうが2割ほど広い。このアパートは江戸間の6帖で、京間に置き換えれば5・1帖でしかなかった。うまい話には裏があるというけれど、不動産屋さんではトラブルの原因になったりはしないのだろうか。その後、江戸間より小さい団地特有の団地間というのがあると知ってさらに驚いたけれど、これじゃ、やっぱり意味がない。
 規格やルール、基準といったものは、地域を超えて統一されなければどこかで必ず不便が生じてしまう。

 日韓共催のサッカー・ワールドカップに備えて、交通エコロジー・モビリティ財団が125種類の案内用のマークを作成した。病院、救護所、警察のほか、トイレやエレベーター、案内所、車いすスロープ、喫煙所のほか、撮影禁止、足もと注意といったマークを、国籍を問わず、だれにでも分かりやすい形で完成させた。街の中には実にさまざまなマークがあって、トイレの男性用と女性用を示すマークが店舗によって違っていたりするように、その多くは施設や場所ごとにまちまち。これらを統一しようとしたわけだ。当面は国内での統一が進められ、先々は国際的な規格として採用されるよう、世界に働きかけていくそうだ。

 時を同じくして、バリアフリーやユニバーサルデザインのポイントを示した国際規格が日本の提案で誕生した。「警告音などは聴覚障害者に考慮して視覚などに訴えるものと一緒に提示する」などのルールを示したものだ。一つのルールが完成したことで、バリアフリーやユニバーサルデザインへの配慮が世界共通のものになっていくわけだ。

「欧米では、あまり感情を表さない日本人の顔が“石”に例えられることがある」と聞いたことがあるけれど、その日本人の提案で、使いやすく配慮された表情豊かな品々が世界中で増えていくとなれば、何とも愉快で誇らしい気持ちがしてくる。

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Last Update : 2003/02/24