靴下のユニバーサルデザイン

バリアフリー観察記2002年

靴下のユニバーサルデザイン

 朝の慌ただしさのためか、暗がりでなくても意外に間違えやすいのは、靴下の右と左だ。仕事帰りに居酒屋の座敷に上がったとき、外側にくるはずのワンポイントが内側にきているのに気付いて思わずズボンの裾で隠したりすることがある。
 このワンポイントに注目すると、靴下は三つのタイプに分けられる。一つはワンポイントがないもの、もう一つは外側にだけあるもの、そして内側と外側の両方にあるものだ。座敷で恥ずかしい思いをしなくてすむという点では、ワンポイントがないものと外側と内側の両方にあるものがいい。

 そもそも靴下には、靴のような右と左の違いがあるのだろうか。まじまじと眺めてみても、素材のカッティングや縫製にはこれといった違いはなさそうだ。スポーツ用品メーカーに勤める知人に尋ねたところ「一般的には、左右は同じ」ということだった。一般的にとは、5本指の靴下、親指だけが独立したたび型靴下には左右がある、また、足の裏の力がかかる部分にすべり止めを付けたものには、左右の違いがあるということだった。結局、ワンポイントを外側にだけ付けることの特別な意味は、まだ見付けられずにいる。

 ところで、見えない人たちはどうやって靴下の左右を判別しているのだろう。洗濯をするときには同じ柄のものを縛ったりするらしいけれど、何かの拍子にバラバラになってしまうことはあるだろう。独自の印を付けたりしているのだろうか。同じ種類の靴下を見付けるのに、素材の質感やワンポイントを頼りにしたりするのだろうか。自分が視覚障害者だったら、靴下の種類を判別する日々の煩わしさから解放されるために、すべて同じ柄のものをそろえるかもしれない。

 左右を気にせずにはけることのメリットは、何もはき違えることがないというだけではない。小さな子どもは右足にはかせようとしても左足を出してきたり、左足にはかせようとしても右足を出してきたりする。こんなとき、いちいち靴下を持ち直したり反対の足を出させたりするのは結構面倒なものだ。まして、むずかる子どもを着替えさせて外出! なんてときには、どちらの足でもOKならば便利に違いない。そんなふうに考えたら、内外の両方にワンポイントを付けた靴下は、ユニバーサルデザインなのだと思えてくる。

 こうして自分自身の不便さを探していると、自然と障害者や高齢者の不便さに関心が向かうのは、何とも不思議な感じがする。

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Last Update : 2003/02/24